仕事が終わり家に帰る途中、ふと漂ってきた香りで急に昔の思い出がよみがえる。
そんな経験をされた方は多いのではないでしょうか。
これは「プルースト効果」と言われ、香りと記憶がセットになってフラッシュバックする現象だそうです。
そしてこの「プルースト効果」は、なぜか幼少期の頃を思い出すことが多いのが特徴だそうです。
例えば街を歩いていて、何処からともなく金木犀の香りがしてくると、懐かしさとちょっとだけ切ない思い出がよみがえって胸の辺りがキュっとしたり。皆さんも心当たりがあるのではないでしょうか。
幼い頃だけではなく、大人になってからも思い出は多くあり、また思い出には人や景色もあったはずなのに香りは不思議と強烈に残っています。
それとともに呼吸がゆっくりと深くなり、脳のずっと奥にあったあの頃の思い出の風景の中に連れ戻されるような感覚があります。
ふと漂ってきた香りで鮮明によみがった思い出の中に、もう自分はどこにもいない。
そうやって、もう戻れないのだと認識してしまうことが、ちょっぴり寂しかったり切なかったりするのではないでしょうか。
さて、香りと記憶。
一体どんな関係があるのでしょうか。
香りが記憶を呼び起こすのはなぜ?
いろいろな香り
「香り」と一口に言っても色々な香りがありますよね。
例えば、どこかの家からカレーの匂いがしてきて急にお腹がすいてきたり、お盆に何処からともなくお線香の香りがして何となく深妙な気分になったり。
また最近ではアロマオイルやキャンドルで気持ちを整えるといったリラックス効果があることもわかってきて、ご自宅で香りを日常に取り入れてる方も多いのではないでしょうか。
人間の脳と五感
この香りを感じる嗅覚。
実は人間が持つ五感の中で最も原始的と言われ、嗅覚だけが唯一、脳の「海馬」と呼ばれる部分に直接信号を送ることができるのです。
「海馬」という言葉は皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
これは大脳の中で人間の記憶をつかさどる部分なのです。
他の視覚、聴覚、味覚、触覚は大脳皮質という脳の外側を通って、つまり遠回りしてから海馬に情報を届けます。
ところが、嗅覚だけはダイレクトに海馬に情報を届けるのです。
記憶の保管場所
海馬は記憶の保管場所のような役割をしています。
届いた情報に強いインパクトがあると長い時間、保管されやすくなる仕組みになっており、海馬が送られてきた情報を記憶として残しておくべきか、それとも必要ないかを瞬時に選択してくれるのです。
香りは脳だけではない
感情をつかさどる
ここまでで、嗅覚と脳の海馬が強い結びつきがあるのだとわかりました。
では、香りで幼少期の記憶が甦り、同時にその時の気持ちまで思い出すのはなぜでしょう。
それは香りは感情をつかさどる場所とも繋がっているからです。
「え?感情とも繋がってるなんて、香りってスゴい!」と思ってしまいがちですが、なかなかの頻度でトラブルにもなっているんです。
例えば「香り」というと花や、アロマなど、どちらかと言えば良い香りのイメージですが、「臭い」というとどうでしょう?
口臭、体臭、加齢臭などと悪いイメージに変わりませんか?
コントロールされている⁉︎
人はこの香りや臭いに対して、どちらも基本的には我慢したくてもできません。
例えば香水やシャンプーなどの香りも、人によっては嫌がられるかもしれませんし、口臭や体臭のようにあからさまに嫌な臭いを放っていると、何はなくとも嫌われる原因になります。
このように「香り」「臭い」は無意識に感情をコントロールしてしまうのです。
日頃から意識する
誰だってトラブルに巻き込まれたり、人に嫌われたりしたくないですよね。
1日3回ハミガキをする、お風呂に入って念入りに体を洗う、香水も控え目な香りにするなど、ご自分で「香り」を意識して過ごすことが大事です。
今ある香り
香りについて書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。
こんなに脳と密接な関係にあるとは思いもよらず、しかもトラブルをも招きかねないと知って、なるほどなぁと思い当たる方もいらっしゃるかもしれませんね。
私は「香り」あるいは香るものが大好きで、毎日アロマや香水、とにかく何でも香りに包まれていたいと思いながら過ごしています。例えば、街ですれ違った人の香水がいい香りだったりすると、真似して同じものが欲しくなったりします。でも、香水って人や場所が変わると必ずしも同じ香りを漂わせてくれる訳ではないんですよね。
なので、誰かを不快にさせないように気をつけようと思いました。
皆さんは金木犀の香りは好きですか?
香水はつけてますか?
口臭や体臭、きちんとケアしてますか?
今、周りにどんな香りがありますか?
雨、風、電車…それぞれの香り、気に入ってますか?
また何年か経って、今ある香りと同じ香りにふと気づいた時、あなたは何を思い出すでしょう。
そして、あの時は楽しかったと思うでしょうか?
それとも、もう絶対に嫌だと落ち込むでしょうか?
そう考えると、香りって不思議ですよね。
何年後か、私たちは何を思い出して、どう感じるんだろう。
そんな想像をしながら香りを楽しむのもありかもしれません。