体育祭で最も盛り上がる種目の1つであるリレー競技。バトンを繋いで、アンカーには最速の選手が控えていて華麗に1位でゴール!という映像は、リレーに参加した事のある方であれば1度は想像した事でしょう。
しかし、体育祭のリレーで「何となく常識」となっている「アンカーは最も速い人説」は間違っているかもしれません。
本場のリレー競技から学ぼう
リオデジャネイロ五輪のリレー
近年、日本のリレーチームがリオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得し、日本中が歓喜した事は記憶に新しいのではないかと思います。そのリオデジャネイロ五輪、上位3ヶ国の選手の100m自己ベストを走順に並べて見たいと思います。
1位ジャマイカ 1走:9秒72 2走:9秒69 3走:9秒90 4走:9秒58
2位日本 1走:10秒05 2走:10秒22 3走:10秒01 4走:10秒10
3位カナダ 1走:10秒15 2走:9秒96 3走:10秒28 4走:9秒97
※ 2016年リオデジャネイロ五輪が行われた当時の記録
陸上競技の本場の世界では
リオデジャネイロ五輪の結果を見ると、ジャマイカは最も速い選手がアンカーを走っていますが、日本は3走、カナダは2走を走っています。一見「じゃ、アンカーは速い人で決まりだ!」と思われがちですが、よく見てください。ジャマイカ2走の選手は9秒69、、、日本とカナダの最も速い選手より更に速い選手ではないですか!
そうなのです!
本場である陸上競技の世界では、2走と3走がエース区間と言われ最も速い選手が走る区間となっています。アンカーではなく中間に位置する2走と3走なのです。
ジャマイカは、2番手の選手がエース区間を走っても他国と負けない、さらにアンカーには最速の選手が待ち受けている、、、これが勝利の要因だったのかもしれませんね。
リレーは走者の配置戦略が勝負の鍵を握る
なぜ、最も速い選手が中間の区間を走るの?
これはリレー特有の「バトンパス」と各区間の選手が「走る距離」にあります。
バトンパスは前走者が走って来た時、少し手前から助走を開始し、走りながら受け渡すといった瞬間を、たくさんの人が観た事があると思います。という事は、、、「アンカーの走る距離は一番短い」という事になります。
「アンカーの走る距離は一番短い」ってどういう事?
1人が100mを走るリレーが行われた場合
アンカーは助走を5m取ったとすると「5m助走+95m走る」という事になります。助走はスタートをするタイミングは決まっていませんので、他者より早くスタートしても全然OKな訳です。ですから助走を除くと「実質走っている距離は95m」という事になります。
一方で中間の選手は「助走の5m+95m+次走者に追い付く5m」となりますので、アンカーの選手よりも「5m多く走っている」事が分かります。
そうすると1走の人が一番長く走る事になるのでは?
「1走の人が一番長く走る事になるのでは?」と思われている方もいるかと思います。
しかし、1走の選手はスタートをする選手ですが、スタートラインはバトンを受け渡すラインよりも、前方に引かれている事が多いのです。それを考えると「中間を走る選手が、最も長い距離を走る」という事になる訳です。
(スタートラインと、バトン受け渡しのラインが一緒である場合は、1走に最も速い選手を配置する事も良いかもしれませんね。)
適切な助走とは
残念ながら、この助走を数メートルしか行わずすぐにバトンを受けてしまう事がありますがこれは非常に勿体無い!
この助走を数メートルではなく、もっと長い距離で助走を行い、前走者が追いついて来たところでバトンパスができるとスムーズになるだけでなく前走者が長く走る事になる訳です。
競技会等であると足長(足の数)で距離を設定する事が多く、相場として20足長から30足長の間となります。足の大きさにもよりますが、分かりやすく25センチの人で25足長とったとすると「25センチ×25足=625センチ(6.25メートル)」となる訳です。こちらを目安に助走距離を設定してみるのも良いかもしれませんね。
まとめ
アンカーは最も遅い人?
「最も速い選手が長く走った方が全体が速くなる」事は皆さんもお分かりでしょう。この事から考えると「中間に最も速い選手が走る」という事も納得いただけるのではないかと思います。
しかし、アンカーが「最も遅い人が走るべき」という事ではありません。アンカーは最終的な順番を決める、大事な走者である事には変わりまりません。従来のように、順番を決定するアンカーは最も速い人が走るべきという戦略にも一理あると思います。
リレーは面白い
リレーは、走者の配置によって勝敗が別れる事のある、非常に難しく面白い競技です。
様々な戦略がある中、これまで解説して来た事やこれまでの戦略を踏まえてリレーの走順を再検討してみると、さらに勝利へ近くかもしれませんね!